コンタクトセンターで人を育てる7<やる気編>

コンタクトセンターで人を育てる7<やる気編>
  ──仕事で大切なことはすべてここで学べる──
・「やる気」=モチベーションの正体
・和気あいあいの落とし穴

コンタクトセンター(コールセンター)は少し特殊な世界です。
○○業界というくくりもないあいまいな業種。縦割り社会。孤立した組織。就業人口は100万人と言われていますが、正規社員が少なく、賃金レベルは低い。「あまり行きたくない世界」「あまり就きたくない仕事」と思われていることも多いようです。

人材育成は採用から教育まで現場主導、評価システムも現場で構築、業務の特殊性が汎用的なセオリーを拒みます。組織として成立し始めてから20年は経つのに、組織論も役割定義もいまだ混沌としたままです。「インハウス」運営でも「アウトソーシング」運営でも求めているのは「効率」「コスト」。それなのに、「顧客満足」「品質」も要求される難しい職場です。

だからこそ...ここで頑張る人たちにスキルがつかないわけがない!

管理者の視点からも、業務に従事する人の視点からも読めるコンタクトセンターの人材育成の解体新書をシリーズでお届します。

第七回 コンタクトセンターで人を育てる<やる気編>

「やる気」=モチベーションの正体
従業員の能力の20~90%は動機づけに左右されるそうです。ずいぶん幅がありますね。
ともあれ、人的資源を有効に活用するためには、従業員の持てる能力が存分に発揮される状況をつくることや、可能性のある能力を開発することが大切です。

個を活かすことにより組織は活性化する。
この考え方のもとに「モチベーション理論」は数々発表されています。

一番有名なのはマズローでしょうか。欲求五段階説という学説です。人間の欲求には五段階のレベルがあるという階段状の図をよく見かけます。マズローのこの説は、一つが済んだら次、という階段状のステップを考えるのではなく、どの欲求が起こりやすいかを確率的に示したものだそうです。

今日の社会では、それぞれの段階の欲求はある程度満たされていたり、部分的に満たされていなかったりという状態です。生理的欲求はある程度満たされるまで、最強の力を持つそうです。単純に、シフト環境設計や食事時間の規則的な提供など「生理的欲求」をきちんと満たす施策はやる気に大きく影響するということですね。

ハーズバーグは「動機付け衛生理論」を唱えました。用語は難しいのですが、内容はシンプルです。人の要求は二種類ある。その要求が満たされねば著しい不満を生むが、それが満たされてもとくにやる気になるわけではない「衛生要因」と、その要求を達成しようとして積極的に「やる気」になる「モチベーション要因」である。
給与や人間関係への不満を解消しても、それは、マイナスをゼロにしただけ、ゼロをプラスにするのは別の対策であるという、わかりやすい理論です。
ちなみに、「ゼロをプラスにする」要因には、「達成」「達成を認められること」「責任の増大」「チャレンジングな仕事」「向上と成長」などがあります。

「モチベーション」はそれぞれの個性。昇給や昇進を本人が期待していたなら、昇給や昇進が誘因になって「やる気」になります。一方では、上司の期待や扱い方により、業績や能力発揮度合いが大きく異なる人もいます。
多くの場合、部下は自分に対する上司の期待に沿って行動します。部下を信頼し、部下に高い業績を期待できる優秀なマネージャーが部下の成長を助けます。この考え方を期待理論と呼びます。

もうひとつ分かりやすい例をご紹介します。学習に関するモチベーションの考え方で有名なのは、アメリカの教育工学者ジョン・M・ケラー(John M.Keller)のARCSモデルです。
ジョン博士は、学習意欲を高める方法は、「なぜやる気がでないのか」をチェックして、それに応じた作戦を立てると効果的ではないかと考えました。
「やる気を出させるためにはどうしたらよいか」「勉強する意欲をもたせるためにはどうしたらよいか」などとただ漠然と考えるより、効果的です。

やる気がでない理由には4つの側面があります。
注意(Attention)、関連性(Relevance)、自信(Confidence)、満足感(Satisfaction)です。博士は、その頭文字をとってARCS モデル(アークスモデル)と名づけました。

ARCS モデルの4側面
注意 (Attention) : おもしろそうだな
関連性(Relevance) :やりがいがありそうだな
自信 (Confidence):やればできそうだな
満足感(Satisfaction):やってよかったな


学習に限らず応用できます。
「興味ある業務」に「やりがいを感じ」、「適切な目標に自信を持って臨み」、「結果に満足する」というストーリーができれば、「つまらない、やる気がおきない」という不協和音は聞かれないはずです。

以上は代表的な理論のご紹介です。理論がたくさんあるということは、適用範囲も多様だということです。ケースバイケースで考え方を採用すれば必ず自分たちの組織に当てはまるものがあると思います。

・和気あいあいの落とし穴
職場は時として理不尽です。万人に好かれる職場なんてあるはずがありません。わたしたちは、「誰もが一生辞めない職場」を目指しているわけではないのです。

従業員満足度を測る職場は増えてきました。メンバーの状態を幅広い側面から把握し、組織のモチベーションとの関連を明らかにすることができれば、モチベーションアップに繋がるからです。
従業員の満足度が向上すれば、顧客満足度もあがり、生産性もよくなり..と何もかもすべてがうまくいくなんて考えていませんか。本当でしょうか。
従業員が満足するかどうかを測る項目は幅広く存在します。気をつけなくてはいけないのは、各項目の数値がよければ、モチベーションも高いかというと、そうでもないことです。

満足度は高いが、モチベーションは低い
居心地のよい、いわゆる「ぬるま湯」風土です。人間関係に大きな波風も偏りもなく、みなが和気あいあいとして雰囲気が良い。ただし、全体的に業績は伸び悩み..不況で離職率が低くなると、こんなことも起こりがちです。

満足度は低いが、モチベーションは高い
なんだかややこしい状況ですが、こんな結果ももちろんあります。インセンティブ制度や歩合給の割合が高く、部門内コミュニケーションや風土作りに部門長が無関心、または不熱心な職場などに起こります。仕事に対する「やる気」は皆あるのですが、社内はギスギス..などということがないか、下位成績者だけが、離職サイクルを作り上げていないかなど要注意状況が発生します。

満足度、モチベーションともに低い状況は論外としましょう。もちろん、そのような状況ならあらゆる角度からの施策が必要です。

満足度、モチベーションともに高い、組織として活力がある状態を、どのように確認すればよいか、どのように構築すればよいか、視点を分けて探るべきですね。

第八回は<効率編> センターの生産性について考えます。

Y‘sラーニング株式会社

・学習院女子短期大学卒。
・業務アプリケーションサポート業務、ネットワークの運営管理サポート
業務を経て、コールセンター、ヘルプデスクの構築、運営に携わる。
 2000年より、品質管理および人材育成を担当。
・品質管理、採用、要員教育、教育コース開発、顧客満足度調査の
結果分析を行いスキルの標準化、可視化に取り組む。
・2005年5月Y‘sラーニング株式会社設立。代表取締役
 (社)IT協会 チーフディレクター
 コミュニケーションおよびマネジメント研修を中心に活動中
・著書:「できる人の要約力」(中経出版)

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