コンタクトセンターで人を育てる5<手法編>


コンタクトセンターで人を育てる5<手法編>
  ──仕事で大切なことはすべてここで学べる──
・インストラクショナルデザインを学びましょう

コンタクトセンター(コールセンター)は少し特殊な世界です。
○○業界というくくりもないあいまいな業種。縦割り社会。孤立した組織。就業人口は100万人と言われていますが、正規社員が少なく、賃金レベルは低い。「あまり行きたくない世界」「あまり就きたくない仕事」と思われていることも多いようです。

人材育成は採用から教育まで現場主導、評価システムも現場で構築、業務の特殊性が汎用的なセオリーを拒みます。組織として成立し始めてから20年は経つのに、組織論も役割定義もいまだ混沌としたままです。「インハウス」運営でも「アウトソーシング」運営でも求めているのは「効率」「コスト」。それなのに、「顧客満足」「品質」も要求される難しい職場です。

だからこそ...ここで頑張る人たちにスキルがつかないわけがない!

管理者の視点からも、業務に従事する人の視点からも読めるコンタクトセンターの人材育成の解体新書をシリーズでお届します。
※「スキル」などに関する一部の記事が以前のコラムと重複する場合がありますが、なにとぞご容赦を!

第五回 コンタクトセンターで人を育てる<手法編>

・インストラクショナルデザインを学びましょう

インストラクショナルデザイン..耳になじみのあまりない言葉でしょうか。
インストラクショナルデザインとは、教育の効果や効率を高めるための方法論です。第二次世界大戦時、効果的な新兵訓練を実施するために米軍で考案さました。米国内では、1980年代半ばから広く浸透しています。「教育工学」とも呼ばれ、近年、日本でも企業、大学などで注目が高まってきています。いわゆる「PDCAサイクル」を教育の分野で徹底させる手法ですので、近年なじみやすくなってきたのでしょう。

インストラクショナルデザインは、「教える方法」を学ぶだけのものではありません。プロセスを考える場合の基本的な手法です。チームのビジョン、ミッション、その方針、戦略など「教育」を取り巻く組織の環境全体を分析し、最適な手段を見極めます。
「組織や学習する人のニーズ調査」「役割や必要なスキルの分析」「ニーズに則した教育カリキュラムの設計」といった手順を踏んで、体系的に組織内の教育全体をデザインするのです。さらに、最終フェーズは「効果の検証」、まさにPDCAです。

・インストラクショナルデザインの必須要素

インストラクショナルデザインは、「ニーズ分析」「設計・開発」「実施、導入後評価」という3つの手順をサイクルとして設計します。
詳細に分類すれば、「設計」と「開発」、「実施」と「導入後評価」は別のフェーズですので、手順は5つです。あえて「3つ」としているのは、力を入れるボリュームを示すためです。
通常研修制作では、「設計」や「開発」に時間がかかり、「ニーズ分析」や「導入後評価」をおざなりにしがちです。
それぞれのフェーズには同じくらいの労力が必要です。(図1)
ニーズ分析にも設計にもさまざまな要素があります。このフェーズをしっかりと固めることにより、より効果的な教育体系ができあがるのです。


社員教育は本来、将来の収益を生み出すための投資です。ところが、どれだけ有益な人材を育てることができたかといった効果を把握できている企業は少ないのが実情です。皆さんはきちんと効果測定していますか。アンケートや出席管理に留まっていないでしょうか。

インストラクショナルデザインでは、それぞれにフェーズと内容を定義することで、成果目標や達成期間を具体的に設定し、効果測定が抜け落ちることを防ぎます。
職務の内容や必要な行動特性を明確にしたうえで教育カリキュラムを設計することによって、研修内容の重複や不足による再教育などの無駄を減らして教育を効率化していくのです。
何事も最初が肝心、「ニーズ分析」には時間をかけましょう。

・研修の効果測定のお手本

有名なのは、「カークパトリックの4段階評価モデル」と呼ばれるものです。
米国のドナルド・カークパトリックにより開発され、研修業界では定番ともいうべき理論です。初出はなんと1959年!30年たった今日でも、研修の成果を測定するモデルとして、最も広く利用されています。

今回は簡単にご紹介

Level 1 - Reaction -
参加者の研修コースへの反応を測定評価します。通常、「アンケート」ですね。これは、9割の研修で実施されていると言われています。

Level 2 - Learning - 
研修コースを体験して、知識、スキル、行動などが何か変わったか、あるいは習得したかを評価するものです。テストなどがポピュラーです。評価レベルとしては浅く、偏りが出るケースもあります。

Level 3 - Behavior -
実際に行動に移すことができたか、など、参加者の変化を測定、評価するものです。
実際の仕事でのパーフォーマンスを観察したり、評価したりするものですので、時間もかかりますし、評価指標の作成が的確でなくてはなりません。

Level 4- Business Results -
学習の成果がビジネスに、どう活かされているか、生産性、顧客のロイヤルティー、売上、利益等で測定して評価することをビジネスリゾルトと呼びます。(例えば、サポートへの電話の回数の減少数やクレー率の減少などですね)この評価は「研修に起因しているか」どうかの証明が難しいものも多く、実際に実施している(実施できている)企業は少ないといえます。

後に、ジャック・フィリップスはカークパトリックの4つのレベルにROIを追加して、レベル5を定義しました。

Level 5  ― Return on Investment ―
研修のコストと利益の関係を数値として示すものです。研修の結果得られた利益をお金に換算し、研修を実施し設定するのにかかったコストを上回っているかどうかを見るということです。能力を数値で表す工夫も併せて必要になるため、大変難しいですね。

研修の効果測定というと「アンケート」の結果分析、テストの数値管理に終始していませんでしたか?効果測定は悩ましい作業ですが、手法を知るとアイディアも浮かびます。
人を育てるためには手法も大切!「インストラクショナルデザイン」、ご一緒に勉強してみませんか。

第六回は<モニタリング編>モニタリングという品質管理活動の本質を理解しましょう。

Y‘sラーニング株式会社

・学習院女子短期大学卒。
・業務アプリケーションサポート業務、ネットワークの運営管理サポート
業務を経て、コールセンター、ヘルプデスクの構築、運営に携わる。
 2000年より、品質管理および人材育成を担当。
・品質管理、採用、要員教育、教育コース開発、顧客満足度調査の
結果分析を行いスキルの標準化、可視化に取り組む。
・2005年5月Y‘sラーニング株式会社設立。代表取締役
 (社)IT協会 チーフディレクター
 コミュニケーションおよびマネジメント研修を中心に活動中
・著書:「できる人の要約力」(中経出版)

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