コンタクトセンターで人を育てる4<スキル編>

コンタクトセンターで人を育てる4<スキル編>
  ──仕事で大切なことはすべてここで学べる──
・知識はすぐには使えない、あんなに教えたのにって言わないで。
・属人化からの脱却手段「スキルインベントリ」

コンタクトセンター(コールセンター)は少し特殊な世界です。
○○業界というくくりもないあいまいな業種。縦割り社会。孤立した組織。就業人口は100万人と言われていますが、正規社員が少なく、賃金レベルは低い。「あまり行きたくない世界」「あまり就きたくない仕事」と思われていることも多いようです。

人材育成は採用から教育まで現場主導、評価システムも現場で構築、業務の特殊性が汎用的なセオリーを拒みます。組織として成立し始めてから20年は経つのに、組織論も役割定義もいまだ混沌としたままです。「インハウス」運営でも「アウトソーシング」運営でも求めているのは「効率」「コスト」。それなのに、「顧客満足」「品質」も要求される難しい職場です。

だからこそ...ここで頑張る人たちにスキルがつかないわけがない!

管理者の視点からも、業務に従事する人の視点からも読めるコンタクトセンターの人材育成の解体新書をシリーズでお届します。
※「スキル」などに関する一部の記事が以前のコラムと重複する場合がありますが、なにとぞご容赦を!

第四回 コンタクトセンターで人を育てる<スキル編>

・知識はすぐには使えない、「あんなに教えたのに」って言わないで。

一般に、私たちは職場で必要な能力のことを「スキル」と称しています。
さて、「スキル」とは何でしょう。
この「スキル」という言葉の定義は以前にも書きましたが、ちょっと復習しておきます。
コンタクトセンターに限らず、企業における人材育成で分類、検討されるべき「能力」とは、もちろん「職務遂行に必要な能力」のことです。
職務遂行能力(一般に「職業能力」)は、「スキル」より大きな意味合いになります。

シンプルで整理しやすい分類をご紹介しましょう。「KSA」という能力分類法です。
「KSA」は以下の頭文字です。
K:Knowledge(知識)
S:Skill(技術、技能)
A:Attitude(態度)


たとえば、「電話対応の能力」ひとつとっても、さまざまな要素があります。
単に「電話対応スキル」とか「コミュニケーションススキル」と称してしまえば、いろいろなことがこの中に包含されてしまい、必要な育成要素が洗い出しにくくなりますね。
「KSA」を使って考えてみましょう。

電話応対を例にして考えてみると...
・知識(K):ビジネスマナー、敬語、商品知識、サービス内容、関連部署..
・技術・技能(S):マナーや敬語の実践、わかりやすい説明、インフラ操作..
・態度(A):傾聴する態度、サービスマインド、責任ある対応...

このように、分類することで、社内教育はより実施ポイントがつかみやすくなります。
【図1】(クリックで拡大)


能力が分類できたら、次に大切なのが、それぞれの能力の適切な獲得方法を考えることです。
「知識」は学習することで身につけることができます。ただし、「覚えた」だけでは使えません。知識を発揮するためには訓練を通じて「技術・技能」に展開しなくてはなりません。

簡単なたとえでいえば、「キーボード配置を知ることは『知識』、キーボードを見ずに打てるようになることが『技術・技能』です。
教育は「しくみ」が大切です。知識を得るための「学習」と技術を習得するための「訓練」を効果的に組み合わせて構成すれば、教育は「効率化」が図れます。

「あんなに教えたのに、みんなちっとも覚えてくれない」なんて、愚痴をこぼしたくなるようなことがあったら、「習得までのストーリー」を見直してみましょう。
そもそも覚えにくいことなのか、覚えているのに発揮できないのか、分類があれば分析も可能です。

・属人化からの脱却手段「スキルインベントリ」

スーパーバイザー研修でお聞きすると、皆さんが共通して感じている「職場の問題点」の第一位はいつも「スキルのばらつき」です。
「ばらつき」があることに問題意識を持つことは正しいことです。
そもそも、品質管理の原点は「ばらつきをなくすこと」ですから。
ただし、「スキル」は何がどのようにばらついているのでしょう。

前回、「組織内のすべての役割は定義されるべきである」という、対象者の役割定義の「必要性をご説明しました。
その中で「職業能力」については、
・キャリア単位での必要なスキルを定義すること
・定義されたスキルに到達するための教育体系を作ること
が、必要であるとお話ししています。

人に得意不得意があるのは、当然のこと。機械による生産ラインではない私たちの業務は「ばらつき」が前提といっても過言ではありません。
この「ばらつき」のコントロールが人材育成の仕事です。

1.役割単位で「知識」「技術」「態度」を定義する
2.定義に対する評価基準を設定する
3.基準に沿った各人の評価を実施する
4.評価結果に対する施策(教育など)を実施する


「スキルインベントリ」とは「能力の目録」のこと、上記1~4の作業がサイクル化できれば、センター内の人材は適切に管理されているということができます。
属人化してしまっている部分の正しい分析、ばらつきの許容範囲、人依存せずにシステム化による解決が図れる部分の設定など、「インベントリ」が完成していれば、解決できることはたくさんあります。
何がどうばらついているかをきちんと見極めることができるからです。

「コンピテンシー」(=高業績者の行動特性)は、有効な能力定義です。ただし、その定義は漠然としているため、とかくあいまいな項目になりがちです。
「協調性」「顧客志向」「サービス精神」「判断力」..どう測りますか。
スキルインベントリ作りはこのようなコンピテンシー項目の定義をはっきりさせ、評価基準を可視化することにも役立ちます。

人を育てるための、「能力定義とスキルインベントリ」、皆さんの組織にはありますか。

第五回は<手法編>インストラクショナルデザインをご紹介します。

Y‘sラーニング株式会社

・学習院女子短期大学卒。
・業務アプリケーションサポート業務、ネットワークの運営管理サポート
業務を経て、コールセンター、ヘルプデスクの構築、運営に携わる。
 2000年より、品質管理および人材育成を担当。
・品質管理、採用、要員教育、教育コース開発、顧客満足度調査の
結果分析を行いスキルの標準化、可視化に取り組む。
・2005年5月Y‘sラーニング株式会社設立。代表取締役
 (社)IT協会 チーフディレクター
 コミュニケーションおよびマネジメント研修を中心に活動中
・著書:「できる人の要約力」(中経出版)

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