コンタクトセンターで人を育てる3<対象者編>

コンタクトセンターで人を育てる3<対象者編>
  ──仕事で大切なことはすべてここで学べる──

・自分ができないことや、やったことのないことも部下に指示できますか?
・教育の対象は新人だけじゃない
・キャリアパスにスキル定義とラーニングパスが乗っているとかっこいい!

コンタクトセンター(コールセンター)は少し特殊な世界です。
○○業界というくくりもないあいまいな業種。縦割り社会。孤立した組織。就業人口は100万人と言われていますが、正規社員が少なく、賃金レベルは低い。「あまり行きたくない世界」「あまり就きたくない仕事」と思われていることも多いようです。人材育成は採用から教育まで現場主導、評価システムも現場で構築、業務の特殊性が汎用的なセオリーを拒みます。組織として成立し始めてから20年は経つのに、組織論も役割定義もいまだ混沌としたままです。「インハウス」運営でも「アウトソーシング」運営でも求めているのは「効率」「コスト」。それなのに、「顧客満足」「品質」も要求される難しい職場です。

だからこそ...ここで頑張る人たちにスキルがつかないわけがない!

管理者の視点からも、業務に従事する人の視点からも読めるコンタクトセンターの人材育成の解体新書をシリーズでお届します。
※「スキル」などに関する一部の記事が以前のコラムと重複する場合がありますが、なにとぞご容赦を!

第三回 コンタクトセンターで人を育てる<対象者編>

・自分ができないことや、やったことのないことも部下に指示できますか?

「できもしないことを言ってはいけない」という意味ではないのです。
コンタクトセンターは、ベースとなる一次対応はテンポラリーな要員に専任化されていることも多く、いわゆる「はえぬき」のリーダーや管理者が少ない傾向にあります。
上層部はローテーションによる社内異動ともなれば、一次対応経験ができるとは限りません。もちろん、このようなことは一般の職場でもあり得ます。コンタクトセンターでは特に顕著な傾向だというだけです。
 自分が経験した職務でも、管理、監督、指導業務は別物、適切な指示や指導は大変です。ましてや経験していない職務ならなおさらです。「名プレーヤー名監督にあらず」です。
未経験の職務をどのように「定義」し、スキルセットしていくか、未経験の職務に対する理解や共感をどのように示していくか、これは管理者の重要課題ですね。

・教育の対象は新人だけじゃない

 では、本題。
実際、皆さんの職場では、「人材育成」という観点から対象者をどのように位置付けてどのような定義をしていますか。

そもそも、日本の教育は「ふたこぶらくだ」といわれています。
新人は、「業務に就く」という大命題がありますので、もちろん教育は手厚い、そして次にさまざまな研修が待ちかまえているのは「管理職」になる前後であるという説です。
(もっとも昨今では、「勉強する子」と「勉強しない子」の二極分化のことを指したりするようです。どちらにしても困った現象のことですが)
コンタクトセンターでは、新人研修のみが充実した「ひとこぶらくだ」であることもままあります。
導入指導で手いっぱい、中堅クラスには特に教えることがない、ましてや管理職など何を教育したらいいのかわからない..などということはありませんか。
第一回でご説明したとおり、「教育」は人材育成の一つの柱です。効率良い新人教育はもちろん重要ですが、ひとたび着台できればその後は「それなり」でいいなんてはずがありません。

-早く新人を立ち上げるしくみ
-一次対応者が次の役割(二次対応やクレーム処理、インフラ担当やトレーナーなど)に
目標を持って成長できるしくみ
-中途で加入した管理者やプレイングマネージャーに現場業務を浸透させるしくみ
-プレイングマネージャーが「業務」と「管理」をバランスよく切り分けるしくみ
-管理者がよりよい品質、生産性を生む組織を運営していくためのしくみ

..どれをとっても育成支援です。これらをバランスよく推進していきたいものです。
組織のすべての人材が定義され、適切なスキル向上支援が受けられることは大切です。
「適切」と「均等」は違います。新人研修のボリュームが大きいのは当然のこと、でも他の人材に「教育」「育成支援」がないのもおかしなことです。

・キャリアパスにスキル定義とラーニングパスが乗っているとかっこいい!
 
そのためにはどうしたらいいのでしょう。まずは「組織内のすべての人材」を定義することです。
1.役割を定義してキャリアパスを確立すること
 →組織は体系化され、個人には目標意識が生まれます。
2.キャリア単位での必要なスキルを定義すること
 →何らかの標準を使用し、客観的で偏りのない定義がモチベーションに繋がります。
3.定義されたスキルに到達するための教育体系を作ること
 →これを「ラーニングパス」といいます。もちろん、集合研修だけを指しているのでは
  ありません。
4.「ラーニングパス」だけに頼らない支援のしくみをつくること
 →人材育成には「教育実施」ではなく「育成支援」の視点が必要です。
  モチベーション対策もモラル対策もメンタルヘルスも資格取得支援もすべてが
  育成支援の一環となります。
こんな流れが、人を育て、組織を強くするわけです。

<図1>

 図1は「キャリアパス」と能力レベル感のイメージです。
特殊な専任能力が必要だが、決して「職人技」ではない。自己の使命感や成長感だけに頼ることができない業務、いわば「技能職」とも呼ぶべき業務への従事者が多いことがコンタクトセンターの特徴です。その中で「キャリア」を確立していくのは、実は大変なこと、いわゆるゼネラリストとしての管理職しか昇格の道がなければ、モチベーションもモラルも上がらないのは当然ともいえます。
目標となる「キャリア」、「キャリア」への到達支援、「キャリア」に対する正しい評価、これらが一体となって、人材育成は成立します。

人を育てるための、「対象者認識とキャリアの確立」、皆さんの組織では適切に実行されていますか。

第四回はそのスキル定義、コンタクトセンターで人を育てる<スキル編>の予定です。

Y‘sラーニング株式会社

・学習院女子短期大学卒。
・業務アプリケーションサポート業務、ネットワークの運営管理サポート
業務を経て、コールセンター、ヘルプデスクの構築、運営に携わる。
 2000年より、品質管理および人材育成を担当。
・品質管理、採用、要員教育、教育コース開発、顧客満足度調査の
結果分析を行いスキルの標準化、可視化に取り組む。
・2005年5月Y‘sラーニング株式会社設立。代表取締役
 (社)IT協会 チーフディレクター
 コミュニケーションおよびマネジメント研修を中心に活動中
・著書:「できる人の要約力」(中経出版)

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